最近の電子情報通信学会論文誌 概要説明一覧 (2008年3月7日 by 大森)

電子情報通信学会論文誌の掲載論文PDFは著作権の関係上ここには掲載できま
せん。IEICE電子図書館へアクセスしてください。ここでは、最近の論文のうち
いくつかの概要を載せます.

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1. 大森、李、七海、星, 「N-OPS: 系列データベースにおける連続系列パター
ンの探索算法」, 電子情報通信学会和論文誌, Vol.J89-D, No.7, pp.1465-1480,
2006年7月号.

専門分野:データベース

キーワード: 系列データベース、系列パターン探索、文字列照合

あらまし:

本論文では,移動体の観測データ列や株価データ列などの系列データをデータベー
ス化したときに,そこから必要な部分列を探索する問題を扱う.具体的には,連
続した二つのデータにのみ依存したデータベース選択述語を考え,その連接と正
閉包からなる正則表現を問合せパターンとする.本論文は,文字列照合法の考え
に基づいた探索算法N-OPSを示し,その述語実行回数がパターン長 P,入
力データ長Nに対し,NからP × Nの範囲になるこ と,既存の提案技法と異なり,
最左解探索においても完備な探索になっているこ と,を示して,系列パターン探索
における本技法の有用な範囲を明らかにする.

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2. 出口、大森、星. 「ストレージシステムにおけるデータ一貫性を保証した
アーカイブ取得方式」、電子情報通信学会論文誌D-I, Vol.J-88-D-I, No.3,
pp.698-714, 2005年3月.

論文種別: 特集論文 (データ工学論文特集)

専門分野: ストレージ技術

キーワード: アーカイブ, リストア, トランザクション, データ一貫性, ストレージシステム.

あらまし:

現在,データストレージに関するメタデータをデータベース管理システム
(DBMS)にて一元管理し,データストレージを利用する際にこのDBMSを通して
データアクセスを行うようなデータ共有管理システムが注目されている.本論文
では,このような環境におけるデータ一貫性を保証したアーカイブ手法に関して
議論する.このような環境において既存のアーカイブ手法によってデータ一貫性
を保証するためには,システム全体を停止してダンプを行うか,データとメタ
データの操作に対するログを取り続けることが必要とされる.しかし,ログをと
り続ける手法では,ストレージに関するログ量が膨大になりアーカイブには適し
ていない.本論文では,スナップショットの前後一定区間に限ってログを保持す
るようにログを縮約してアーカイブ・リストアを行う体系を提案し,その原理と
手続きを述べる.

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3. 大森、佐藤、星. 「問い合わせ分布に適応したR木の領域分割方式」、電
子情報通信学会論文誌D-I Vol.J-86-D-I, No.10, pp.746-761, 2003年10 月.

専門分野: データベース

キーワード: 多次元インデックス, R木, 領域分割戦略.

あらまし:

多次元データ集合を格納するインデックスの一つにR木がある.R木の性能は,与
えられた方形領域の分割戦略に強く影響される.従来の領域分割戦略は,n次
元のデータを格納の対象としたとき,n個の属性すべてに範囲選択条件を付け
た全次元の範囲問合せや全次元上の近傍検索を対象としており,そのような問合
せに対して効率的なデータアクセスが可能となるように考案されてきた.一方,
時空間データ集合や記録データ集合を扱うデータベースでは,このようなすべて
の次元に関する問合せ(全次元問合せ)だけでなく,部分的な k個 (k <
n) の次元空間における範囲問合せも多く発生する.本論文では,このような
部分次元空間上の範囲問合せをも考慮して多次元データ集合を一つのR木で編成
する問題を扱う.具体的には,範囲問合せの発生する部分次元空間とその発生確
率が問合せ分布として与えられたときに,この分布のもとでR木の領域分割を行
う際のコストモデルを提案する.そして,このコストモデルによりR木を一括生
成する.提案した方式では,2次元と8次元のデータ空間において,従来の
VAMSplit-R木よりも部分空間問合せについて著しい性能向上を得ることができた.

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(備考:だいぶ旧いが自分の博士研究の最初の論文誌の情報)

題目: 「並列ディスクデータベースマシンにおける大量データアクセストランザクション の並行制御方式」

著者: 大森 匡、喜連川 優、田中 英彦.

誌名: 電子情報通信学会論文誌 D Vol.J73-D1 No.1 pp.37-46,

発行日: 1990/01/20

論文種別: 論文

専門分野: データベース

キーワード: 並列データベースマシン,トランザクション処理.

あらまし:

本論文では,大量のデータを処理するトランザクションの並行制御方式として
「重み付きトランザクション順序グラフ」を用いた先読みスケジューラを提案す
る.実行環境としては,複数のディスクモジュールから構成された非共有型並列
データベースマシンを想定している.このグラフはトランザクションの直列可能
性とその実行コストを表しており,これを用いてデータ競合・リソース競合のよ
り小さい直列可能スケジュールを生成できる.シミュレーションでは,提案した
スケジューラは2相ロック,一括ロック,楽観的ロックに対し1.3倍から2倍の性
能向上が得られている.